一冊の本から
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テーブルコーディネートという言葉を作られたクニエダヤスエさんが亡くなられて、月曜日にお別れの会に出かけてきました。私が24歳の時に手にした『テーブルコーディネーション』という本。一枚の布と白いシンプルなお皿があれば、暮らしを楽しむ工夫が出来る考え方を知った時、頭の中に雷が落ちたほどショックだった。こんな発想をする人がいるなんてと、渋谷の西武百貨店で開催された初めてのテーブルコーディネート展に友人と出かけ、クニエダさんとお話できたのは27年前。


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それから、クニエダさんが展をされる度にテーブルの上のお皿に置くリアルな食材の粘土サンプルを15年間作らせていただきました。最初の頃は、トリフチョコレートやチーズ、アスパラガス、レッドピーマンなど。全く経験がなかったけれど、樹脂粘土とアクリル絵の具で作ってみたら、とても気に入ってくださり、それから時折ハードな課題がやってきて。毎回本物とにらめっこしながら、どうしたらリアルに出来るのか四苦八苦して作ってました。ヨーロッパのシャトーホテルで出された半パウンドのバターやボウル一杯のブルーベリーに生クリームとか、手足のついた茹でた小エビ、ピクニックのシーンの為に缶に入ったオイルサーディンも。ブルーベリーは1本ずつ軸から作って実にはめ込んだり、オイルサーディンは内蔵をまず作り、身を付けて薄い皮をかぶせて、最後に缶に並べてレジンという樹脂を流し込んで作ったり。クニエダさんという方の仕事の一部を手伝えることで若かった自分をどれだけ伸ばしていただいたことか。いろんな食材のサンプルを作らせていただいた15年間、いつも頂くカードは手作り。お礼にと北欧の小物など素敵なものをたくさん贈ってくださる時もほんとうに素敵なラッピングでした。クニエダさんと出会えたから、今の暮らしやモーネの発信がある、恩師のような存在。
粘土サンプルのファイルを懐かしく眺めながら、初めてお会いした時、クニエダさんは今の私の歳だったんだと気がついてびっくりした。そう思うと私はまだまだヒヨコなんだな。これからもっともっとやるべき事があるのかもしれない。そして最後まで現役で活躍されたクニエダさんから教わった『暮らしの工夫』というバトンは、ここで出会うモーネの皆に少しずつ手渡してゆきたいと思ってます。クニエダさん、ほんとうにありがとうございました。
by maane-news | 2011-03-30 12:30
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